優しい嘘、残酷な真実。どっち?
そんな普通の幸せを味わう事もなくこの世を去る彼女が……どうしようもなく不憫だ。
……ジブンニデキルコトハ、ナニモナイ……
俯く頬に、両手が添えられる。
「深山君は、私を救ってくれたよ」
今の間際にこの世を去る者とは思えない笑み。
晴天のように彼女の心は澄んでいる。
「深山君は、私をこの苦しみから助けてくれた。だから……」
そんなに泣かないで。
……無理なことを言わないでくれっ……!
「もう、時間がありません……小川さん、最後に言いたいことは?」
感情を押し殺した葵の声。見てみると彼女の体は両肩の部分までも崩れ落ちている。
「じゃ、一つだけ」
彼女はその大きな瞳を向ける。
「私、深山君のことが好きだった」
……自分を殺した奴の事を好きだなんて言わないでくれ……!
いっそのこと、罵倒してもらったほうが楽だ!
「深山君は、私のこと、どう思っていたの?」
「……俺は……」
嘘でもいい。彼女が、小川美奈のことが好きだと言うんだ。
真摯な眼差し。汚れの無い、純粋な瞳。
淀みの無い澄んだ『心』。
……彼女に、俯いて答えることなど、嘘の答えを言うことなど、できやしない……!