閃光
肩や足からはまだ治癒していないのか、血が流れているし、腹部も治癒が追い付いていない。度重なるダメージが治癒力を落としているのだろうか。それにいくら死なないと言っても、苦痛がない訳ではなさそうだ。様子からいって戦闘など出来そうにない。
緋影はなんとか立ち上がり、前方から歩み寄る小川を凝視する。
彼女の姿が霞む。真っ正面から来る。
腰を落とし、『歪み』を凝視する。
(……この速度じゃまたしくじるのは眼に見えているっ……!)
小川は緋影の間合いに入る直前で、滑るように真横から突っ込んできた。
刃に変形させた右手で、緋影の心臓部を切り裂こうと振り下ろしてくる。
その一撃をなんとかかわし、バックステップで距離を取る。
ナイフを口に咥えながらポケットに手を忍ばせ、閃光弾を投擲。
辺りが眩い閃光に包まれる。
「ぐっ!」
閃光で怯んだ小川に、咥えたナイフを再び手に取り、駆け出す。
「これで終わりにしてやるっ!」
叫びと共にドン、という確かな手応えが手に伝わる。
(今度こそやったか?!)
だが相手の死の気配が伝わってこないっ!
眩い閃光が消え、場を照らす月明りが二人を映し出す。
月光を受け淡い輝きを放つ緋影のナイフは小川の心臓部にではなく、左肘に刺さっていた。
(しまったっ!)
そう思った時には手刀が放たれていた。咄嗟に心臓を残った右腕で庇う。
「グアァァァッ!」
しかし彼女が狙っていたのは緋影の右腕。ナイフが硬質な音をたて、右腕と共に落ちる。腕を切断されながらもなんとか距離を取る。