葵
確かにあの衝動に自分が支配されたら、この街の住人は冗談ではなく本当に自分の手によって死体の山も残さずに消されるだろう。その魂ごと。
「……俺を殺す理由はわかった……でもまだ疑問がある。それなら何故今まで俺を殺さなかった?俺を殺す機会ならいくらでもあったはずだ」
「答えは簡単です。素人のあなたよりも、あの実験体の方が脅威だった。奴に私の体の力を吸収されてしまった時の為に私は貴方に近づいたんです。貴方は奴を倒す為に、利用された。そういうことです」
両腕を失った時にも自分を攻撃しなかったのは、この三日間で化け物が再生されないかを見極める為なのだろう。万一蘇生されたら、彼女の不死の能力を手に入れた実験体を殺すことは出来ない。
『心眼』を使うことを除けば。
「あまり時間もありません。結界は張りましたが、人が来る前に勝負をつけます」
「もう一つだけ、聞かせてくれ」
そう言って、一呼吸おく。
「……俺を殺そうとする理由は……それだけか?」
何か腑に落ちない。
だが葵は無言で槍を左手に携えながらゆっくりと歩み寄って来る。
自分を殺す理由を言われた所で、はいそうですか、と殺されたくはない。