深山
「……俺?」
呆然とした問い掛けに、
「そうです。私の敵は、貴方です」
感情が全く感じられない無機質な声で答えが返ってきた。
「……どうしてです?」
冗談でしょ、とは言えなかった。場が彼女の殺気で凍りつきそうだからだ。
「あなたが、殺人鬼になりかけているからですよ」
「…………!」
「そうでしょう。『心眼使い』、深山緋影」
葵は赤い夕日を見つめながら、やはり感情のない声で告げる。
「それにあなたはすでに誰かをその手にかけていますね?『心眼』を使った三回のうち、二回は実験体が相手でしょうが、残る一回は見知らぬ誰かでしょう」
事務的な確認をするかのような葵の冷たい声に、緋影はどうすることも出来ない。
「呪われた力は、呪われた力で消し去るしかありません」
夕日によって出現している長い影を踏み締めるように、葵は一歩、また一歩と歩み寄る。
「……呪われた力?」
緋影は葵の言葉を繰り返していた。自分の『心眼』は確かに呪われた力だろうが……
「私の体のことは知っているでしょう」
小さな、しかし、凛と通る声で呟いた。