哀れ

ナイフ

ナイフ

緋影は携帯電話の電源を切って、ジャケットを羽織る。

葵が自分を呼び出す、ということは『心眼』の力が必要、という事だ。

……考えたくはないが、あの化け物が蘇生したのだろう……

ナイフとまだ残っていた閃光弾をポケットに忍ばせアパートを出た。

もうすぐ5時になる。不思議な事に生徒はおろか、人っ子一人いない。葵が学校に近づかないよう、周辺の住民や生徒に暗示を施したか結界でも張ったのだろう。

後門から入った緋影は腰を降ろし、彼女が来るのを待っていた。

手をポケットの中に突っ込みながら、ナイフの感触を確かめる。

(……今度この力を使ったら、廃人になっちまうかもな……)

廃人ですむならまだいい。

死ぬ、ということも考えられるが、それは考えられる最悪の事態ではない。

考えられる最悪の事態、それは『心眼』の力に魅入られた自分が殺人、『心』のは破壊に走るのでは、ということだ。

前回は、なんとか衝動を抑え込めた。だが、今回も抑え込めるとは限らない。

(……それでも俺のこの力が必要とされているなら、俺は『心眼』を使う……!)