不安
ジリリリリン、ジリリリリンッ!
「……誰だよ、こんな時に……」
緋影は悪態をつきながら時計に目をやる。今は丁度午後4時半。
(……どこのどいつだ、くそっ……!)
丁度身支度を終え、アパートを出ようとした時に携帯電話が音をたてた。
いらついたように携帯を耳に持ってくる。
「……もしもし」
限りなく不機嫌だ、と相手にわかるような低い声で言った。
「深山君ですか?」
この声は……
「先輩?」
声の主は緋影の先輩、葵皆海のものだ。
「どうしたんですか、」
いや、見当は大体ついている。突然、自分に電話をかけてくる、という事は……いや、そもそも彼女に電話番号を教えた覚えはないのだが……
「すいません。事態が切迫しているもので」
真剣な口調。普段の彼女の声質ではない。
「詳しいことは後で話しますから、5時までに学校の後門に来ていただけませんか」
「わかった、すぐにいく。俺が行くまで無茶はしないでくれよ、先輩」
一瞬の沈黙の後、
「……はい。深山君も、気をつけて来て下さい」
葵はそう答えた。