哀れ

日常

日常

緋影はその後、普通に学校生活を送っていた。

大竹も首をギブスで固定しているものの無事に退院し、以前と何ら変わらない生活を送っている。

ただ、気になることがある。

怪物を倒してから三日、葵は自分の前に一度も姿を表してはいない。

そして、白マントが言っていた言葉。

それでもこの三日、殺人事件等は起こってはいないし、平穏そのものだ。

「お〜い、緋影っ!」

帰宅途中、大竹は後ろから声を掛けてきた。歩みを止めて彼を待つ。

相当長い距離を全力疾走してきたのだろう。珍しく息があがっている。

「……ふう。あのさあ、お前、先輩がどうしているか知らねえか?」

大竹は小川に関する記憶を失っていた。大竹本人は首の怪我は寝違えたものと思っているようだ。恐らくは葵が暗示術で小川に関する記憶だけ消したのだろう。

だが、葵皆海という人物についての記憶はまだ大竹の中に残っている。目的が果たされたのであれば、記憶から彼女の事を忘れさせてもいいはずだ。もうこの街に彼女がいる必要はないのだから。

(この街に定住してくれるのなら個人的にはうれしいんだが……やっぱりまだ何かあるのか?)

そう考えた方がしっくりくる。

「おい、聞いてんのか、緋影っ!」

大竹の大声で思考から引き戻される。

「ああ。俺も先輩とはこの三日、会っていない。残念ながら、さっぱりわからん」