忠告
緋影は葵と別れたあと、自分のアパートに向かっていた。
この角を曲がればアパートはすぐそこだ。
しかし、角を曲がった所で、緋影はある人物を視界に捉えた。
「……何の用だ、白マント」
白マントは答えない。
こいつはどうも葵とは敵対関係にあるようだ。
彼女との戦いの為に、自分を人質に使おうとでも考えているのかもしれない。
今の疲弊しきった体では、葵と五分の戦いを繰り広げたこいつに勝てる気がしない。
それでも緋影は疲労を悟られぬよう、白マントの眼を射抜くように見つめる。
「……一つ、忠告しておく」
白マントがあの男女の区別がつかない、不可思議な声で話し掛けてきた。
「……まだ、戦いは終わってはいなぞ。気を抜くなよ、深山緋影……」
「戦いが終わってない?!どういうことだ?!」
しかし、白マントは何も答えない。
白マントは例の如く夜の闇に溶け込むように緋影の視界から徐々に消えていった。